私は40歳でうつ病を発症した。
そして5年が経った今もなお、絶賛闘病中である。
うつ病になる前の30代後半。私は自分で始めた仕事も順調で、ストレスはあんまり感じていなかった。好きな仕事が出来てうれしくて楽しかった。周りの人々にも恵まれて、毎日が幸せだった。
だからまさか、そんな自分がうつ病になるなんてことは、一瞬たりとも思わなかった。うつ病なんて遠い他人事だと思っていた。
でも、その病気は、知らないうちに私の中に入り込んでいたのだ。
2011年の4月、それは始まった。
春先から「今日はあんまり仕事に気分が乗らないな」という日があったり、いつもならもっと早く出来ることに時間がかかったり。少し体調に不具合があったりしたが「疲れてるのかな」と思い、やり過ごしてしまった。
はっきりと異変に気づいたのは、ある日曜日の朝だった。
着替えようと思ったら、靴下が履けないのだ。普段なら意識すらせずに出来る、当たり前のことが出来ない。困惑して取り乱し、でもどうやっても靴下は履けない。気がついたらどうしていいか分からず、裸足で号泣していた。涙が止まらなかった。
さすがにここで「自分はおかしい」ことに気づいた。翌日病院に行くと、重度のうつ病です、と診断され、すぐに休養を、と勧められた。
この時はまだ、うつ、と聞いても数週間休めば元通りになると思っていた。これから何が起こるかなんて、想像すら出来なかった。
休養を始めたとたん、スイッチが切れたように、私は寝付いてしまった。口も聞けず、移動はトイレに這って行く時だけ。ほとんど動けなくなってしまった。
寝転んでいるだけなのに、激しい不安と苦しみが続く。思い通りにならない身体や思考、終わりの見えない闘病への恐怖、失った物。混沌とする頭で、それらを考えるたびに、衝動的に自殺したいと何度も思った。全部投げ出してしまいたい、終わりにしたい、と願った。でも絶望しながら死ぬ気力さえ湧かなかった。
少し起き上がれるようになっても、気持ちは落ち込んだままだ。身体的な体調不良も続く。毎日最低の気分。お風呂にも入れない。テレビや家電の音も怖い。何を見てもマイナスの感情しか湧かない。なにもしたくない。というか出来ない。ただ動かず、ふとんにくるまるだけの日々。時間だけがどんどん過ぎていく。
もがきつつ、空回りしつつ、どん底から這い上がってきても、気分は常に「うつ」に振り回される。それが5年近く続いた。果てしない長さに感じられた。うつ病は、元気な頃の私が想像していたよりも、何倍も怖い病気だった。
それでも長い時間をかけて治療してきたかいがあって、身内の支えもあって、2016年12月の私は、気分は中の下くらいになった。
今のところはまだ、病院の先生や身内としかちゃんと話せないし、1人で出かけるのも苦手。人の多い賑やかな場所も怖いし、引きこもりに近い生活を送っている。仕事はもちろん家事も何も全然できない。メールやSNSのやりとりもまだ難しい。できないことだらけだ。
だけど、近頃は落ち着いているので、楽しいことを思い浮かべたり、小さな幸せを感じたり、笑ったりもできるようになってきた。ようやく、ボーッとした状態から目が覚めてきたような感じだ。気持ちはまだ不安定だけど少しずつ心は動き、物事が理解出来るようになってきた。拙いけど文章も少し書けるようになった。社会生活からドロップアウトした私にも、いよいよ社会との接点を持つ時期が来たかもしれない、と期待して、ひっそりとこのブログを始めることにした。
続くといいな、と思っている。