フライング社会復帰から2ヶ月で再発。焦らないで。その焦りが、さらにうつ病を悪化させることも。

今日は私のフライング社会復帰と挫折について書く。

本当は恥ずかしくて消してしまいたいような思い出なのだが、自分の中だけにいつまでも置いておくと、羞恥心は返ってふくらんでいき、恥ずかし死にするかもしれないので、サラッとインターネッツに流して、情報の海で薄めてしまおうと思う。

うつ発病から1年半ほど経った秋の始め、私はとても焦っていた。

発病した頃の完全フリーズは解け、気分の波はあるものの、たまに調子のよい日があるようになってくる。そうすると出てくるのが、

「みんな働いているのに、私だけこんな風に休んでいて、社会人として自分はダメなんじゃないか」

という、働きバチな日本人らしい、かなり重量感のある罪悪感である。

当時の私は、へんなふうに律儀で、それこそ「働かざるもの食うべからず」的な、古風な日本人らしい魂の持ち主だったので、毎日毎日、罪悪感に苦しめられていた。

初めてうつ病になった時、たくさんのお客さんが

「しっかり直して帰ってきてください。また一緒に仕事できるのを待ってますから」

と言ってくれた言葉の「待ってます」だけを切り取り、こんなに待たせて、もう本当に申し訳ない、と罪悪感にターボをかけていた。

そして私はその罪悪感と焦りに耐え切れず、こともあろうに、その年の10月に社会復帰してしまうのだ。

今の私が、あの時の私に会いに行けるなら、張り倒して、気絶させて、余計なことをしないように、ベッドにぐるぐる巻きにして縛り付けてやりたい。

しかし、そんな未来の私の気持ちなど、つゆほども知らない当時の私は、自社サイトやFacebookに、

「おかげさまで病気も良くなりました♪ ご心配、ご迷惑をおかけした皆さま、本当にごめんなさい。これからもがんばって行きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします」

…などと書いてしまった。

いやぁぁぁ、身体がよじれるほど恥ずかしい、治ってないのに、自己の罪悪感と焦りを消すためだけに、ものすごくデンジャラスな、フライング・リスタートを切ってしまったのだ。

自分で広告プランナーをやっていた私は、「今日から復帰」と宣言して、仕事が入ってくれば、社会復帰になるのだ。

「待ってましたよ、これからもお願いしますね」

というメッセージとともに、いくつかの仕事が入った。私は自信を取り戻し、積極的に仕事に取り組んだ。

…か、しかし、ただ治った宣言をしただけで、治ったわけではないので、私の頭は前のようにスラスラ動かない。体調も悪く、思うように身体も動かない。

前はすぐにひらめいたアイデアが、降りてこない。私は引き受けた仕事を、精一杯のチカラでやり切った。しかし、それはとてもお粗末な展開となった。

お歳暮ギフトのパッケージやプロモーションの企画が、納期を大幅に過ぎてしまったのだ。納品できたのはお歳暮の注文時期の中頃になってから。

「企画とパッケージは、ほんとに素晴らしい。松桐谷さんに任せて良かったと思いますよ。

でも、今の時期からプロモーションを初めて、どれくらい売れると思いますか?」

私は何も言えなかった。ただ頭を下げて、うつむくしかなかった。

販売促進プランナーが、広告シーズンに間に合わせられないなんて、致命的にもほどがある。プロとして失格だ。カッコ悪すぎて、恥ずかしくて、穴があったら入って穴を塞いでしまいたい。

信頼してくれた人を裏切ったという、後悔と懺悔の気持ちは泥のように心の中に溜まり、痛みを伴う渦となった。

その他に引き受けた仕事も、なんとかギリギリやり遂げ、10月頃の「治った宣言」から2ヶ月後の12月の終わり。もう体調はドロドロで、精神状態はぐちゃぐちゃになっていた。私は地方の出張先から友人の横水さんに電話をかけた。

横水さんはわざわざ私のところまでやって来てくれ、私の話を聞いてくれた。

「…横水さん、私、再発しちゃったかも」

私は震えながらそう、横水さんに言った。

今思えば、ハナから治ってないので再発も何もあったもんじゃないわけだが、当時の私は「治った」ということを自分に信じ込ませていたので、また「うつ病に戻る」ということが震えるほど怖かったのだ。

「大丈夫、大丈夫、帰って病院に行こうよ」

横水さんはそう言ってくれ、その日は横水さんとホテルで2人、眠りに落ちるまでいろんなことを話した。

年が明けて私は、療養生活に戻った。焦りと罪悪感をなくすために社会復帰したツケは大きく、「失敗した」「人様に迷惑をかけた」という挫折感×罪悪感は、復帰前の苦しみをはるかに凌ぐものだった。

私のうつ病ライフにおける、大暗黒期と言えるこのシーズンの、スタートのピストルの引き金を引いたのは、他の誰でもない「勝手に治った宣言」をした私なのだ。

あの時、焦らずにもっと我慢して療養を続けてたら、今頃もっと良くなっていたのかなぁ、と今も時々思う。

その反面、あのフライング復帰で挫折したからこそ、過去への執着や未練をバッサリ断ち切ることが出来て、療養に専念出来るようになったので、まぁ、結果オーライなのかなぁ、とも考えている。

そんなわけで、焦りや罪悪感から、社会復帰したいと願う、うつ病患者さんがいたら、私、その気持ちはすごーく分かる。私、それやって失敗したもの。今もアレは恥ずかしい事した、と思っているし。

仕事は相手のあることだから、迷惑をかけてしまうかもしれないし、うまく行かなかった時、何より一番、自分が自分の不甲斐なさに追いつめられる。そして、その後の苦しみは半端ないものになる。

健康体の人に比べて、どこか調子の悪いところがあったら、まだ時期尚早かもしれない。

私にはまだ先だけど、次に復帰出来るタイミングが来たら、自分のことも周りのことも、よーく考えて動きたいなぁ、と思っている。

本当に、うつのフライングは、火傷する。

だから私は、いつもこう自分に言い聞かせている。

あわてない、あわてない、

今は人生の中のひと休み♪