心にいつも花束を。逃げ恥のゆりちゃんの名セリフから考える、罪悪感の手放し方。私の場合。

「自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい」

これは昨年大ヒットしたドラマ、「逃げ恥」こと「逃げるは恥だが役に立つ」の最終回で、主人公の新垣結衣ちゃんの叔母役、石田ゆり子さんが演じる、ゆりちゃんが言ったセリフだ。

見てなかった人のためにそのくだりをさらっと説明すると、ゆりちゃんは49才の独身キャリアウーマン。17才年下の風見くんと恋に落ちたか落ちないか、みたいな状況で、風見くんのことを手に入れたい女の子が、アラフィフのゆりちゃんに対して、若さをアピールしながらディスってくる。

それに対して、ゆりちゃんは、

「今あなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来でもあるのよ。自分がバカにしていたものに自分がなる。それって、辛いんじゃないかな」

と答え、続けて、

「自分に呪いをかけないで」

と、冒頭のセリフに繋がるのだ。

私は毎週このドラマを、目を皿のようにして欠かさず見ていて、このゆりちゃんのセリフには心底シビれた。

このゆりちゃんの「自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい」は、恋も仕事も大切にしたい世の女性に圧倒的に支持されたが、その他のケースにおいても、とても有効なメッセージだと思う。

私を含めた世の中のうつ病患者さんは、うつ病になると必ず持たされる罪悪感のせいで、自分に呪いをかけてしまっている。

「みんなが働いているのに、自分ばっかり休んでいて怠け者だ」

「家事さえもろくに出来ないなんて」

「無職だ、ニートだ」

「自分には価値がない」

「生きている資格がない」

「死んだほうがいい」

うつになった私は、次々と自分に呪いをかけていく。

ただでさえ、重い病にかかっているのに、わざわざ自分に対して、激しい呪いをかけ続けているのだ。

そしていつしか、死を願ってしまうようになる。ほかの内科外科の病気にはない、うつ状態特有の思考回路にハマり、抜け出せなくなってしまうのだ。

言葉は、強いエネルギーを持つ。スピリチュアルな話ではなく、言葉は本当にエネルギーがあるのだ。

その証拠に、誰かに心無い言葉を吐かれた時、心は傷つき悲しい思いをする。その言葉が何年もトゲのように心に刺さったままになることだってある。

逆に、誰かが暖かい言葉をかけてくれたら、ホッとしたり、元気になったり、幸せになれたりする。

言葉は呪いでもあり、祝福をもたらしてくれるものでもあるのだ。

だから、自分自身に向かって悪い言葉で思考を続けたら、ますます心が傷ついていくのは当たり前なのだ。

ゆりちゃんのセリフで、自分で自分に呪いをかけ続けていることに改めて気付いた私は、自分を、自分の状態を、いい言葉に置き換えてみよう、と思った。

そういえば病気になる以前の私は、広告業界方面で働いていたので、セールスポイントを見つけるため、短所を長所に言い換えることは、日常的にやっていたのだった。

例えば、

「周りになーんにも無い、山奥の温泉旅館」

なら、

「温泉から眺める満点の星空をひとり占め。日常を忘れられる空間」

だとか、

「めちゃめちゃ立地の悪いバー」

なら、

「知る人ぞ知る、隠れ家的バー」

とか。

ウソは言わない。同一の事実を、悪い印象の言葉から、良いイメージになるように言い換えるだけだ。それでも人は、後者の説明なら来てくれ、喜んでくれる。

それを自分にもやるのだ。

上の例と同じく、「私はうつ病が治った」といったような、ウソは単にむなしくなるだけなので、あんまり意味がない。

「無職のうつ病患者」

が私の商品とするなら、どんなキャッチコピーを付けるか。

「自由業。24時間、すべてが自由時間」

なかなかいいかも。スナフキンみたいな自由さがある。でも自由時間のかなりの時間を、うつにノックアウトされてるから、

「専業うつ」

はどうかしら? 専業主婦の発音で、気負ってない感じもあるし、なんだかユカイだ。

「いつも物憂げなマダム」

あぁ、これもいい感じ。いいとこの奥さん感が出てる。なおかつ物憂げな、ってとこで、ゆるくウェーブした髪が肩にフワリとかかったような、若いお兄さんをサラッとあしらっちゃうような、オトナのいいオンナ風に聞こえる。

じゃ「1日寝込んでる」をステキに言うと?

「平日なのに、真っ昼間からゆ〜っくりおふとん。贅沢な時間を過ごしています」

それじゃ、「死にたい」をカッコよく言うと?

「僕は生きることをいつだって止められる。」

あら、ちょっと村上春樹的ニュアンス。それか、

「生きることも死ぬことも、どっちだって好きに選べるのさ。だからとりあえず今は生きておくんだ」

うつ病になったスナフキンなら、こう言うよね。

くだらないと思うかもしれないけど、意外と効果がある。ただ言い換えるだけで、私の罪悪感はどんどん薄れていった。

罪悪感なんて、持っててもあんまり役に立たない。太宰治とか夏目漱石レベルじゃないと、罪悪感を昇華させて作品にして有効活用することは出来ないので、偉い小説家を目指してない限り、なるべくサッサと手放したほうが、うつ病は早く良くなると思う。

「自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい」

ゆりちゃんの言うことは本当、正しい。

そんなわけで、今日の私は、

「1日中の〜んびり、おふとんの中でくつろぎタイム。この後は自由気ままに風のふくまま。物憂げなマダムの贅沢で素敵な休日」

といった感じで過ごしている。

皆さま、ごきげんよう。