外が怖い、外出できない。こんな症状が出るなんて聞いてないよー。

うつ病になってからの私は、とにかく外出が出来なくなった。

うつの一番ひどい時は、横になったまま長いことフリーズしていたので、病院以外に出かけることもほとんど無かったが、そこから少し回復してくると、外に出かけたい用事も出てくる。

でも、怖いのだ。外に出るのが怖い。人に会うのが怖い。もう、理由なんて無く、ただただ怖い。

常に不安を抱えて生きているし、生命力が激減しているので、家族以外の人に会うのが怖いのだ。

宅配便のお兄さんが、インターホンを鳴らしても出ることが出来ない。再配達させることになってごめんなさい、と心で謝りながら私は家の中で息を潜め、インターホンをスルーする。

そんな状態なので、外に出かけるのは一大事だ。外出は怖いが、時にはコンビニに行って、お菓子くらいは買いたい時もある。

しかし病院と違ってコンビニは、生命力の高い場所であるような気がするので、買い物に行きたい気持ちと、怖い気持ちがせめぎ合う。

そして私は、夜の闇にまぎれてこっそりとコンビニへ出かける。なるべく人のいない時間を狙って、深夜の隠密行動だ。

でもやっぱり外出するのが怖いので、私は完全防備で出陣のスタンバイをする。

マスクをして、サングラスして、帽子を被り…

…今思えば、どこからどう見ても、強盗の見本のようなスタイルである。

コンビニのお兄さんは、よくカラーボールを投げ付けなかったと思う。家族と一緒だったから大丈夫だったのかしら。単独行動でその恰好だったら、たぶんカラーボール投げられてたよね。私がコンビニの店員さんなら投げるよね。

でも、他者から見れば思いっきり不審人物のスタイルだが、内側の私本体としては、外側の世界から自分を守ってくれるバリアのようなアイテムが、マスクやサングラスだったのだ。

そんな格好じゃ返って目立つじゃん、と今の私は思うが、それでも当時は必死の思いで武装していたのだ。

そんな私も今はうつ病が小康状態となり、1人で家の周りを散歩することが出来るようになるまで回復してきた。

私の病気を理解してくれている、友人の横水さんと一緒なら、近所の喫茶店も行ける。

ただ、まだ、うつの不安が心の中に存在するので、喫茶店では無意識に背後が壁になっている席を選んでしまう。

狙撃されないよう背後を取らせないゴルゴ13並みの慎重さで、背中の守りを固めてしまうのだ。もう壁を背負って出かけたいくらい、私は壁に寄り添っていたいのだ。

横水さんと喫茶店に行く以外では、ごくごくごくまれに家族にショッピングモールに連れて行ってもらうこともあるが、これは年に数回あるかないかくらいの「かなり調子のいい日」でないと行けない。

ショッピングモールは生命力がとても高い場所なのだ。特にフードコートの辺り。エネルギーに満ち満ちている。まだ無理。難易度、高過ぎ。私のレベルではまだ攻略出来ないステージである。

そのような感じで今の私は、とても狭いテリトリーで静かに生きている。遠出の外出は、まだまだスペシャルイベントだ。

それでも一昨年は遠出なんて考えられなかったのに、去年は2回、日帰りだけど遠くへのお出かけが出来たので、今年は3回になればいいな、という野望を持っている。

うつ病でほとんどの時間を家で過ごしている私にとって、世界はとても広い。その世界を、今いる場所から少しずつ攻略していって、行動出来るフィールドを広げていけたらいいな、と思っている。

ー無理せず、ゆるやかに、慎重に。

そう自分に言い聞かせながら、とりあえず明日も家の周りを散歩に行く。