副作用で15kg増えて四苦八苦したあげく出来るようになった「今を生きる」ということ。

うつ病になり、私は薬の副作用で体重が増え、ベストの時より15kgも増えた。ボインを手に入れた代わりに、くびれたウエストを失った。

病前がわりとスリムだったので、今はだいたいポッチャリとデブの中間くらいかな、そのへんである。

体重計に乗ると、

「Oh! Really?」

と、思わず外国人になってしまうほど、私の体は重くなっている。このまま行くとヘビー級になってしまう。せめてどうにか今のままをキープしたいところである。

うつ病がひどい時、私はグレーのジャージしか着れなくなってしまったのだが、
(その話はコチラ↓)

夢を見た。 私はアーケード街を歩いて、ウィンドウショッピングをしている。良さげなセレクトショップを見つけ、店内をウロウロ見てい...

グレーゾーンを脱し、うつが小康状態となった今、病前に着ていた服を着てみようと思ったらコレが、

てんで入らない。

洋服の前が閉まらないどころか、袖すら手が通らないのである。

病前の私はスレンダーバディを誇示するかのような、細身の服ばかり好んで着ていたので、持っていた洋服のほとんどが使えない。

15kgの壁は厚いのである。考えてみてほしい。15kgも増えた体は、5kgの米の袋を3つも体に巻きつけているのと同じ状態なんである。おわかり?

そこから遡ること1年半ほど前、ポッチャリとなってしまった私は自分の身の上を嘆き、解決法を探してネットの海をさまよった。

「うつ病はただでさえ、自分を責めてしまう病気です。

それなのに太っていたら、ますます自己嫌悪してしまいますよね。

毎日しっかり早起きをして、運動をしましょう。太るのは自己管理が出来ていない証拠です」

そんなことが書いてあるサイトを見つけ、私はスマホに向かって怒る。

「アドバイスみたいな感じでトドメを刺すな! だまれ、だまれ!」

自分で見ておいて怒るのもアレだが、うつ病患者さんが太るのは薬の副作用だからである。自己管理うんぬんの話ではない。
(その話はコチラ↓)

うつ病の治療には服薬が欠かせない。薬のおかげで回復できるのだが、薬には効果がある代わりにリスクもある。 それが「副作用」である。 私は5...

運動も、出来ればそれに越したことはないが、運動するエネルギーとかモチベーションなんて、私の中のどこにも見当たらない。

服用している薬が変わらない限り、体重を落とすことはほとんど出来ないのだ。

だから薬が変われば体重も下がる。一度違う薬に変わったら、増加する一方だった私の体重は、みるみるうちに減少していった。ベスト体重に近いところまで行った。

でも、うつの症状は良くも悪くもならず、気持ちは低いところで停滞していた。

主治医のK先生に相談すると、

「違う薬を使ってみますか。でもコレ体重増加の副作用があるんだよね」

「使います、いいです、太っても」

私は即答した。太るよりも、うつのほうがもう、断然イヤ。

この窮地から救いだしてくれる薬なら、その薬に私の体を差し出しますから! すがる思いで私は新しい薬を飲み始めた。

その結果、私は小康状態まで上がってくることが出来た。その代わりに体重も順調に増えてきてしまった。

そして、最初のシーンに戻る。

前に着てた服、どれも着れないじゃん。

私は意を決して、病前に着ていた服をばんばんゴミ袋に詰めていった。洋服がぽんぽんに詰められたゴミ袋は、全部で7袋にもなった。

私は家族に頼んでブックオフに連れていってもらい、その7袋分の洋服を売り飛ばしてきた。

いやー、なんかもう、すっごいスッキリ。

私は清々しい気分になった。私はたぶん、7袋分の洋服とともに、スレンダーバディだった過去を惜しむ気持ちも一緒に処分してきたのだ。

そして私はまた、ネットの海をさまよう。でも今度の探し物は、副作用デブの解決法ではなく、検索ワードは、

「おしゃれ ポッチャリ」

である。

先日、こんな雑誌も買ってみた。「ラ・ファーファ」~ぽっちゃり女子のおしゃれバイブル。

ポッチャリめのお嬢さん達がモデルのファッション誌だ。私はおばちゃんだけど、眺めているだけで、ポッチャリでもこんなにオシャレできる可能性があるんだ、とワクワクする。

過去に戻らなきゃと四苦八苦するより、今の状態のままで、いかに楽しく生きていくか。それが重要だ。

そこに思いが至った時、これまでに何度となく耳にしたことがある、または目にしたことのある「今を生きる」という言葉の意味が、なんとなく分かった。

そう、私は過去をもう振り返らない。「今を生きる」のだ。

ポッチャリの体とともにね。