私はホラー映画やホラー小説が大好きだが、幽霊は全然信じていない。
私は子供の頃に父を亡くした。もし幽霊という状態が存在するとすれば、父は絶対私に会いに来ると思うのだが、30数年経っても来ないので、幽霊は存在しないのだろうと思っている。
そんなわけで幽霊はまるっきり信じていないのだが、ホラー映画もホラー小説もエンターテイメントとして楽しんでいる。見たからといってうつ病の状態が悪くなることもないし、良くなることもないが、普通の人と同じように楽しむことができる。
一方、幽霊は信じないが、占いはその時々で信じる。信じる、というか、うつ病になってから気にしてしまうのであまり見ないようにしている。
朝のテレビでやっている星座の運勢ランキングは、始まると速攻でテレビを消すくらい避けている。ランキングの途中でテレビを付けてしまった時が最悪である。うっかり途中を見てしまったからには、自分の星座が、ヤギ座がどうなるのか、見届けなければならない。
「テッテレッテレ〜⤵︎ 残念〜、今日のヤギ座は最下位の12位。上司とのトラブルに気をつけてくださいね。ラッキーアイテムは傘です〜」
などとガッカリBGMが流れて女子アナさんが申し訳なさそうに発表したなら、ガーン!と音がするほど心は暗く落ち込む。
私は専業うつなので、ほとんど出かけることはないし、誰に会うわけでもないのだが、外出の予定も無いのに玄関へラッキーアイテムと言われた傘をチェックしにいく。上司なんかいないのに、トラブルが起きたらどうしよう、と思い悩む。 うつ病の私には、星座ランキングはものすごい負担なのである。
特に、最下位と最上位を最後に発表するやつ。あれには本当に参る。世間の皆さんはそんなにメンタルが強いんですか、と問いたい。12分の1の確率で朝から不幸の予告をされるというのに。
そのように占いに惑わされる私は、去年までの3年間、いわゆる大殺界だった。ようやくこの新年に大殺界を脱出した。大殺界に入る前からうつ病だったし、大殺界を抜けてもうつ病で、何も変化無しなのだが、何か肩の荷が降りたような、何かを成し遂げたような、ホッとした気分である。
また占いだけでなく、私はわりと迷信深い。夜に口笛は吹かないし、夜に爪も切らない。くしゃみを3回すると誰かが噂をしているのかと思うし、茶柱が立てば大喜びする。食事の後にゴロンと寝て「牛になってしまう」と思う。思うだけで寝転んだままだが、思う。
また私はジンクスにも弱い。財布にはお札の向きを揃えて、福沢諭吉や夏目漱石の頭を上向きにして入れるとお札の居心地が良いので、お金が出ていってもまたすぐ戻ってくると聞けば、そのように財布を整理する。
そんなある日、漫画の「闇金ウシジマくん」を読んでいたら「札を財布に入れる時は、逆さまに入れろ。金が逃げないように」というセリフが出てきた。ちょっと考えて私の財布はそれ以降、ウシジマくんシステムを導入し、お札が逆さまに入っている。
私とオカルトやスピリチュアルなことの関わりはだいたいこんな感じなのであるが、ようやくここで今日の本題である。
うつ病を5年もやっている専業うつの私は、時々こんなことをアドバイスされる。
「お祓いしてもらったら?」
「すごくいい先生がいるの。見てもらったら?」
以前、うつ病をやっていると出てきて困る「がんばれ、気の持ちようだ、という人」について書いたが、
(その記事はコチラ↓)
同じくらい困るのがこの、「お祓いを勧めてくる人」である。この5年間に3人の知人から言われた。
善意で言ってくれているのは分かる。分かるから、そう言われた時、こう答えるしかない。
「…うん、もう少し元気になったらお願いしようかな」
と困り顔で言いながら、心の中ではこう思う。
『お祓いとか、すごい先生に会いに出かける元気があれば、うつ病なんかやってないわ!』
うつ病患者さんにお祓いを勧めようと思っている、そこのあなた。それは親切心からのアイデアだと思うが、ちょっと待って考えて欲しい。
お祓いを勧めるということは、「あなたには悪いものが憑いているから」と言ってるのと同義なのである。
だから「お祓いをしてもらったら?」と言われると、私はものすごーくイヤーな気持ちになる。この人には私が悪いものに憑かれているように見えるのだな、と。
ただでさえ、理由のない不安にかられる病であるのに、そんな恐ろしいことを言って、うつ病患者さんをさらに不安にして苦しめるのはどうか止めてほしい。
病と向き合って、懸命に生きている人に「悪いものが憑いている」なんて言わないでほしい。
どうしてもお祓いしたいくらい大切な相手なら、すごい祈祷師とか、すごい先生に遠隔で(すごい人ならそのくらいできると思う)お祓いを勝手にやってもらってから、
「お祓いしといたからね、きっと良くなるよ」
と声をかけてあげるようにしたらいいと思う。神社にあるような病気平癒のお守りを渡すくらいの感覚なら、お祓いも問題ない。私も時折友人からお守りを貰う。私のいないところで私の治癒を願ってくれたこと、それはとてもうれしいことで、貰ったお守りは大切にしている。
また、うつ病患者さん本人が、お祓いをしてみたいと思うのなら、何かに意欲が持てることは回復の兆しだし、良いことだと思うので、やってみたらいいと思う。
でも、お祓いの押し付けはもう、本当に勘弁してほしい。私はノーサンキューである。