うつがひどく起き上ることもままならなかった頃、私はふとんの中にスマホを持ち込み、悪いニュースや不吉な予言ばかりを検索して見ていた。
そんなの不謹慎、悪趣味だ、と病気になる前の元気な私なら、そう思っただろう。元気な人の視点から見れば、確かにその通りかもしれない。
でも、うつで気分が最悪な病人の立場からすると、野次馬的な気持ちというより、暗い悪いニュースに救いを求めてしまうのだ。
その頃の私の世界は暗黒で、常に最低の気分だから、気分に見合った情報を探してしまう。
悪いニュースばかり見ていると精神に悪影響を及ぼす、と聞くが、うつ病の私は、悪いニュースを見るから滅入るのではなくて、滅入っているから、悪いニュースを探してしまうのだ。
明るい楽しそうな話題は辛すぎて見れない。暗い話題を見てホッとする。どうしてホッとするのか分からないけど、悪いニュースは、うつ病で苦しむ私に安心をもたらしてくれる。
世界の終わりも何度願ったか分からない。オカルト的な予言のまとめサイトを見て、まだかまだかと世界の破滅を待ちわびる。
死にたいくらい辛いけど、死ぬ気力さえ湧かない。自力で死ねないので世界が滅びてくれればいい、と本気で思う。
ネガティブ思考は良くない、と人は言う。それはもっともだが、心が全部ネガティブになり、ポジティブなことを受け付けないので、どうしようもない。
そしてそんな自分を恥じる。自己嫌悪に陥る。世間の皆さんは希望を持って、毎日ちゃんと働き、日々の暮らしを営んでいるのに、私ときたらふとんの中で、こんなバッドニュースばかり集めて安心し、世界の破滅を願っている。
私ったら最悪だ。私はダメだ。ますます気分は落ち込んでいく…
ーーもし、あなたが今、うつ病に苦しみ、以前の私と同じように自己嫌悪に苛まれて過ごしているとしたら。
どうかそれ以上、不安にならないで。
どうかそれ以上、自分を責めないで。
あなたがネガティブな人なのではなく、それ病気のせいだから。
うつ病で脳が誤作動を起こして、ネガティブなことしか考えられなくなってるだけだから。
あなたが悪いニュースばかり見ているとしたら、それは心を防御する自衛本能だから。
あなたは全然ダメじゃないよ。
治療を続けて、きちんと薬を飲んでいれば、そこからちゃんと上がって行けるよ。
だから、調子が悪い時は、悪いニュースばかり検索していてもOK。1人でこっそりスマホを見てるだけなら、誰にも迷惑かけないから、くたびれるまで探すといいよ。
あなたが世界の破滅を願ったとしても、たぶん世界が滅びることはないので、精いっぱい願って大丈夫。
気がついたら、いつのまにか、そんなことしなくなっているから、今は心置きなくバッドニュースを見ていていいよ。