私は私の本棚を覗かれたくないが、kindleなら覗かれないよね!うつ病患者にはオススメkindle。

私にとって、誰かの本棚を見ることはとても興味深い。その人の考えていることや、時には意外な一面を垣間見ることが出来るからである。

以前仕事をしていた時、打ち合わせにいった会社で通された社長室には、たくさんのビジネス書に混じって、相手を思い通りにコントロールする心理学、という本や、自分の意見を100%通すトーク術、といった本が置いてあった。社長さんはとても誠実そうで温厚そうな方だけど、ははぁ、そういう知識を得たいんだなぁ、と納得した。

またある時、ふんわりした女性らしい友人の家に遊びに行ったら、本棚には料理の本や女性作家のエッセイに混じって数冊、成功哲学系の本が並んでいた。ちょっと待って、そんなに野心家なの⁉︎と、顔には出さずに驚いた。

またある時、テレビのニュースを見ていたら、どこかの大学のえらい博士がインタビューに答えていた。先生の顔がアップになったら、後ろの本棚の学術書や専門書が並ぶ端っこに、可愛いチワワの育て方、という本があった。真面目な顔をして難しそうな話をしている先生に一気に親近感を覚えた。

自分がそういうことを考えるので、私は自分の本棚を見られることが、とても恥ずかしい。頭の中を覗かれているような気がするからだ。私は人の本棚は覗きたいが自分の本棚は見られたく無い人種なのだ。

…というのを前提として、話を進める。

私は読書が趣味である。うつ病になってしまい、一時期まったく読めない時期もあったが、回復するに連れ、また本を読むことが出来るようになった。

すると家族が「コレ使うといいよ」と、kindleをプレゼントしてくれた。うつ病で自分で本屋さんに行くことが出来なかったので、kindleで本を買ってすぐ読める、というのは、すごく便利でありがたかった。Amazonで普通に紙の本を配達してもらうより早いし、お手軽。

私が使ってるkindleの最新モデルはコレ↓

薄くて軽いし、たくさんの本を入れておける。寝転んでいることが多く、外出が出来ない読書好きのうつ病患者さんは必携のアイテムだ。

使っているうちに、kindleと普通の紙の本とを使い分けるようになった。

読み返したり、ページを行ったり来たりして熟考して読んだりするなら紙の本。例えば、ブッダの教えとか、ニーチェの言葉とか、考え方や格言集などの本。また画集などのビジュアルがメインの内容のものも。こういった本はkindleに比べて数は少ないが、紙の本で買う。

対してkindleでは、エンターテイメント系の本を買っている。私は推理小説やアンダーグラウンドなお話が大好物なので、ミステリーやサイコスリラー、ノワールストーリーなどを選んでいる。kindleだと家族にすら本棚を覗かれることがないので、少々ブラックなタイトルの本だって平気で「購入」ポチ、である。

そんなわけで、リアルな本にはキラリと光る私の知的な一面が、kindleには私のダークサイドが、というようにハッキリと、自然と分かれてきた。

そんなある日のことである。わたしはうつ病の治療で病院に行き、薬局で薬をもらい、コンビニに寄って帰ってきた。病院や薬局は待ち時間が長いので、そのお供にkindleは最適なのだ。

ところが、である。

帰ってきたら、無いのだ。私のkindleが!

私は真っ青になった。前半でも書いたように、ただでさえ私は本棚を見られたくない人種である。それなのに、その本棚から知性をキッチリ抜いた、私の暗黒面ばかりが際立つラインナップのkindleを、どこかに置いてきてしまったかもしれない。

タクシーの座席? 病院の待合? 薬局? コンビニでお財布出した時に落とした?

拾った人は私のkindleを開いて、ズラズラ並ぶ、血に塗れたタイトルや表紙を見る。1冊1冊のタイトルや表紙には、そこまでの威力はないかもしれないが、500冊近くそんなのばっかりである。この持ち主、ヤバいヤツなんじゃね?と思うかもしれない。きっと思う。せめて本当はブッダもニーチェも読んでたりなんかするんですよと叫びたい。あぁ、死ぬほど恥ずかしい。どうしよう⁉︎

私は焦って、その日行った場所全部に電話をかけた。どこにもない。もう一度落ち着いてゆっくりバッグの中を改めてみる。

…あった。

薬の袋に挟まれて、私の暗黒kindleがそこにいた。脱力する。あんまり薄くて軽いので気づかなかったよ、kindleちゃん。

その後、私はkindleにパスワードを設定出来ることを知ったのであるが、めんどうでまだやっていない。